なぜ、丸メガネ?
岡本隆博
いまから数年前に、私は紅葉のきれいな頃に、滋賀県の有名な「永源寺」にお参りをしました。 
      
      バスを降りて、いったん、川までくだってから、そこから細くて急な山道を登っていきます。 
      
      道の左側に、お地蔵さんが、たくさん並んでいました。
      いろんな大きさ、いろんな表情のお地蔵さんがいます。 
      
      そして、なんと、メガネを掛けたお地蔵さんがいるではありませんか。 
      
      そのかわいいこと! 
      
      メガネをかけると普通は誰でも賢そうには見えるのですが、この場合には、賢こそうというよりも、愛嬌があるように見えます。 
      
      このとき、自分がメガネ屋であるということもあるのでしょうが、私は思わずこのメガネをかけたお地蔵さんの写真を撮り、それを日本眼鏡技術研究会雑誌に掲載しました。
      
      
      それで、今回のこのトピックスで取り上げられた他のお地蔵さんで、メガネをかけたお地蔵さんの写真を見ますと、どのお地蔵さんも、 四角いメガネではなくて、丸メガネをかけておられます。
      
      これらのお地蔵さんが作られた時期と言いますと、石の新しさからして、どのお地蔵さんも、さほど昔のようではなく、その時期ならすでに、丸メガネをかけた人々はごく少数派になっている時期でしょう。
      
      なのに、なぜ石工は、これらのお地蔵さんに、ウエリントン型のようなメガネではなく丸眼鏡をかけさせたのでしょうか。
      
      それは、お地蔵さんに人々が求めるのは、大日如来や文殊菩薩のような「知性」ではなく、「優しさ」だからではないだろうか……と、石工が感じたからだろうと、私は想像するのです。 
      
      まさに「円満」な印象を、そのまま表現している丸メガネをかけたお地蔵さんは、人々の心により多くの「癒し」を与えてくださるのではないでしょうか。 
      
      
      ブログ「オレンジ工務店」に掲載されていた写真を拝借しました。
      滋賀県永源寺の丸メガネを掛けたお地蔵さん 
      
      
      ブログ「めっきから塗装処理までの(株)ワカヤマのブログです」 
      に掲載されていた写真を拝借しました。 
      
      
      秋田県角館「学法寺」の丸メガネを掛けたお地蔵さん。 
      ブログ「ひなぎく日和」に掲載されていた写真を拝借しました。 

